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評価:
北大路 魯山人
中央公論社
¥ 780
(1995-06)
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数の子から始まり、あわび、鮎、河豚、猪…と様々な食材や料理について魯山人が語る。
その語り口調が美味しんぼの海原雄山を思わすのは当然。
北大路魯山人こそ海原雄山のモデルであります。
書をよくし、画を描き、印を彫り、古美術をこよなく愛し、料理に明るく、後半生、やきものの仕事に打ち込んだ多芸多才の芸術家である魯山人が、終生変わらず追い求めたのは美食でした。
本書はまさに美食家魯山人の食へのこだわりを十二分に感じれる一冊です。
河豚に対する絶賛ぷりとお茶漬けの記述の多さに少し笑ってしまいます。
筆者の芸術家らしい探究心には敬意を表しますが、食へのこだわりは必ずしも人を幸せにするとは思えません。
どんな食材であってもどんな料理であっても美味しいと感じれる方が幸せだったりします。 何も食材や料理にこだわらなくとも、旬のものを頂き、季節を感じながら楽しく食事できればそれだけで幸せだと思います。
晩年の魯山人は狷介な性格が災いして、家族とも別れ、訪れてくる人も少ない孤独な日々を過ごしたそうです。真情を語る友のない寂しさを紛らわすように、作陶に没頭。積年の過労といかもの食いは、魯山人の体を徐々に蝕み、体力を要する作陶の仕事を困難にしました。加えるに、経済的な逼迫は、多数の人手を要する作陶の仕事の維持をますます困難にしていました。
天才であったかもしれませんが人格者ではなかったようです。
美食家は満足するということを忘れがち。